
2026年10月18日
真玉海岸と長崎鼻 豊後高田の干潟に映る夕日と花の岬・夷谷の岩峰
大分県豊後高田市の周防灘に面した真玉海岸は、潮が引くと砂の縞模様が干潟に現れ、夕日を映します。菜の花やひまわりの畑が広がる岬の長崎鼻と、国の名勝「中山仙境(夷谷)」の岩峰の谷もあわせて紹介します。
真玉海岸(またまかいがん)は、大分県豊後高田市臼野にある、周防灘に面した遠浅の海岸です。潮が引いた夕方には、沖へ広がる干潟に砂の縞模様が浮かび、そこへ夕日が映ります。同じ市の見目には、周防灘へ突き出た岬の長崎鼻があり、海に面した崖に洞窟が並びます。豊後高田市夷の夷谷(えびすだに)は、岩の峰がそそり立つ谷で、国の名勝「中山仙境(夷谷)」に指定されています。
夕日を映す真玉海岸の干潟
夕方の干潟が西日を照り返す景色は、「日本の夕陽百選」に選ばれています。「おおいた遺産」にも選ばれ、広く知られる夕景になりました。夕日が干潟に映るのは、海岸が西に向かって開けているためです。九州の東側にある大分県では、多くの海岸が東を向いています。
干潟の縞模様が浮かび上がるのは、干潮の時刻と日の入りが重なったときです。潮が引くと、海岸線に沿って約1.5km、沖へ約500mの範囲に干潟が現れます。
波と風がつくる洲と澪の縞
縞をつくっているのは、干潟に数多く入り組む洲(す)と澪(みお)です。洲は砂が盛り上がったところ、澪は水の通り道で、この二つが縞になって続きます。
この縞は、波と風が砂の表面につくる波形の筋、砂漣(されん)の働きで生まれます。風がつくる砂漣は小さく、波がつくる砂漣は大きくなります。
模様は、季節や天気、時刻によって姿を変えます。干潟そのものは、江戸時代からここにあります。海岸の南部では干拓もおこなわれ、真玉川より北には天然の干潟が残ります。
2021年(令和3年)3月26日には、国の登録記念物(名勝地関係)になりました。登録記念物は、国が文化財として登録した遺跡や名勝地などを指します。この海岸では、洲と澪が入り組む干潟の景色が、名勝地として認められました。
菜の花とひまわりの岬の長崎鼻
長崎鼻(ながさきばな)は、岬に菜の花やひまわりの畑が広がることから、「花の岬」とも呼ばれます。場所は豊後高田市見目で、国東半島の北の先端に近く、周防灘へ突き出しています。全国にある同じ名の岬と区別して、香々地長崎鼻(かかぢながさきばな)と呼ぶこともあります。
畑の花は、季節によって移り変わります。見通しのよい日には、岬から近くに姫島、遠くに四国や中国地方が見えます。岬の先端には、香々地灯台が立っています。
行者洞窟と約20の海蝕洞窟
海に面した崖には、海水に削られてできた海蝕洞窟が、約20あります。洞窟の並ぶ海岸は、入り江と岬が細かく入り組んだリアス式海岸です。
古くは修験道の修行の地だったといわれるのが、行者洞窟です。修験道は、山や岩屋にこもって修行する山岳信仰です。洞窟の中には、役行者・不動明王・蔵王権現がまつられています。行者洞窟は、岬に並ぶ洞窟の中でいちばん大きなものです。長崎岩屋と呼ばれる洞穴は、天井の部分が抜け落ち、上に穴が開いた形になっています。
岩峰が連なる夷谷の中山仙境
中山仙境(なかやませんきょう)は、夷谷の西夷と東夷の2筋の谷を分けてそびえる、岩峰の群れです。夷谷は、国東半島の両子山の山々から延びる谷の一つです。2筋の谷は、やがて1つに合わさり、周防灘へと続きます。
国の名勝は、景色のすぐれた土地を、国が文化財として指定したものです。夷谷は、2018年(平成30年)10月15日に、国の名勝「中山仙境(夷谷)」に指定されました。一帯は瀬戸内海国立公園の区域にあり、大分百景のひとつにも選ばれています。
岩肌に松が生える切り立った峰は、集塊岩(しゅうかいがん)でできています。集塊岩は、火山の噴出物が固まった岩です。夷谷は、耶馬渓になぞらえて「夷耶馬」とも呼ばれますが、国の名勝「耶馬渓」の景の一つではなく、別の名勝です。耶馬渓は中津市や宇佐市などにまたがる名勝で、その景の一部は東椎屋の滝の記事で取り上げました。
江戸時代の1819年(文政2年)には、国学者の高井八穂が「夷谷八景」を定めました。中山仙境の岩峰が並ぶ姿は、一路一景公園からよく見えます。
山岳仏教の霊場だった2筋の谷
夷谷は古くから、山岳仏教の霊場でした。東夷には、霊仙寺など六郷満山の寺社の境内が並びます。西夷には、線彫板碑(板状の石の供養塔)や、梅ノ木磨崖仏があります。六郷満山は国東半島の寺々を合わせた呼び名で、その寺と仏は田染荘の記事にまとめました。
出かける前に
周防灘の干潟に浮かぶ洲と澪の縞と夕日、花の岬の長崎鼻に並ぶ海蝕洞窟、中山仙境の岩峰と霊場の谷をたどりました。この記事は2026年10月に書きました。干潟や花畑、谷のようすは変わることがあるので、出かける前に、豊後高田市の観光サイトの案内で確かめてください。
よくある質問
- 真玉海岸の干潟に縞模様が浮かぶのは、どんなときですか。
- 干潮の時刻と日の入りが重なったときに、洲と澪がつくる縞模様が浮かび上がり、夕日を映します。模様は、季節や天気、時刻によって姿を変えます。
- 真玉海岸は、どんな文化財になっていますか。
- 2021年(令和3年)3月26日に、国の登録記念物(名勝地関係)になりました。夕景は「日本の夕陽百選」と「おおいた遺産」にも選ばれています。
- 長崎鼻が「花の岬」と呼ばれるのはなぜですか。
- 岬に菜の花やひまわりの畑が広がるためです。海に面した崖には約20の海蝕洞窟があり、いちばん大きな行者洞窟は、修験道の修行の地だったといわれます。
- 夷谷は、名勝「耶馬渓」の一景ですか。
- 耶馬渓の景ではなく、2018年(平成30年)に指定された国の名勝「中山仙境(夷谷)」です。耶馬渓になぞらえて、「夷耶馬」とも呼ばれます。




